次のような症状のある方はご相談ください。
閉経に至っていない方でも、背中や腰に痛みが生じ、以前よりも身長が低くなってきた感じがする、背中や腰が曲がってきたといった症状がありましたら、骨粗鬆症のサインかもしれません。お早めに当院までご相談ください。
橈骨遠位端骨折は要注意
骨粗鬆症を早期に発見するために、閉経後の女性が定期的な骨密度検査を受けることは大切なことですが、過去に橈骨遠位端骨折(手首の骨折)をしたことがあるという方は、骨粗鬆症の初発骨折として頻度が高いため、注意が必要です。
背骨の骨折だけでなく、橈骨遠位端骨折も骨粗鬆症の可能性があることとしてご注意ください。
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症は、骨の強度が弱く、もろくなってしまい、ちょっとしたことでも骨折を起こしてしまう疾患です。ときには腰痛などの症状もありますが、一般的に痛みなどはなく、ただ骨が弱くなっているだけであることが多いため、気づきにくい疾患の一つです。
骨は血中のカルシウムを取り込み新しい骨をつくり、古くなった骨はまた血中に溶け出して耐えず、新陳代謝をしています。このバランスが崩れ、骨から血中に溶け出すカルシウムの量が多くなってしまうことによって、骨粗鬆症が起こります。
この病気にかかるのは、圧倒的に女性が多く、特に閉経によるホルモンバランスの変化や加齢によることが多いのですが、運動不足や日照不足、喫煙習慣などによって骨がもろくなったり、糖尿病の合併症から起こります。さらに近年では過度のダイエットからカルシウムが不足し、骨量が最大に成長する20代の頃に骨が成長しきれないために骨粗鬆症を起こす人も増えていますので注意が必要です。
検査について
女性に閉経が訪れるのは、個人差もありますが、平均すると45~55歳前後と言われています。骨に影響が生じるまでの時期を考慮にいれると、一般的に60歳前後になったら、定期的に骨密度の検査を受けることをお勧めします。また若い女性でも、無理なダイエットの経験があり、腰痛が気になってきたなどという方は一度ご相談ください。
骨密度測定装置
当院の骨密度測定では、2種類の異なるX線を微量照射して大腿骨頸部などで骨の中のカルシウム量を測るDXA法(デキサ法:DEXA法とも)を使っています。これは日本骨粗鬆症学会が発行するガイドラインでも推奨されている、従来の測定法より精度の高い方法です。X線というと被曝が気になるかもしれませんが、胸のレントゲン検査の6分の1程度の微量なものですので、安心して受診していただくことができます。
このほか、骨粗鬆症の検査としては、血液検査でカルシウム値や骨代謝マーカーを調べたり、X線検査によって胸郭や背骨、腰椎などを調べたりします。
治療について
骨粗鬆症には、加齢や女性ホルモンの変化が大きく関係してします。しかし、その他に食事や運動といった要素が関係しており、「骨の生活習慣病」とも言われるほどです。
加齢やホルモンの変化は予防が難しいものですが、生活習慣は自分で改善していくことが可能であり、骨粗鬆症に至らないための重要な予防方法でもあります。
まずは、骨密度を下げないための予防、また骨粗鬆症になった後も、骨の質を高めるため運動をはじめとした適切な生活習慣を心がけましょう。
その上で、骨の質を高めるための内服薬・注射などによる薬物療法も行います。
食事療法
骨は、耐えず破骨細胞が骨の組織を壊してその成分を吸収し、それによってできた空間に骨芽細胞が入り込んで新しい骨を再構築するというサイクルを繰り返し、新鮮さを保っています。これを専門的な用語では骨のリモデリングといいます。骨の主成分はカルシウムとたんぱく質ですが、このリモデリングのサイクルにとってはビタミンDやKなどの栄養素も重要です。
そのため、カルシウムを含む食物を中心に、適度なたんぱく質、ビタミン類が豊富な食材をバランス良く摂る食生活が必要です。
運動療法
骨を新しく作る骨芽細胞は、骨に体重による負荷がかかるほど、しっかりと活動して骨を丈夫にしようと働きます。逆に運動不足になると骨芽細胞はあまり働かなくなってしまうのです。そのため、骨粗鬆症では予防にも治療にも適切な運動が重要になってきます。
本来は骨に負荷がかかるほど良いのですが、骨粗鬆症によって骨がすでにもろくなってしまっていたり、加齢によって筋力が衰えてしまったりしていると、急に過激な運動をすることは、骨折や怪我につながってしまうこともあります。その点ウォーキングは多くの人が気軽に続けることができる、適切な全身運動です。また外出することは、日光を浴び、骨作りに重要なビタミンDの補給にも役立ちます。
当院では、このほかにも患者様の容体にあわせて、無理なくできる筋力トレーニングや運動方法などを指導していますので、一度ご相談ください。
薬物療法
食事療法や運動療法など、ご自分で続けられる治療を継続しながら、薬物療法を行います。
薬物療法では、その症状や程度などによって、破骨細胞によって骨が吸収されるのを抑制する薬を使用し、骨のリモデリングのバランスを整えます。薬剤としてはビスフォスフォネート製剤やSERMなどのほか、骨の材料を補うためにカルシウム製剤やビタミンDを補う薬なども使用します。
また、症状が重いときには、骨の形成を促進する副甲状腺ホルモン剤や、骨の吸収を著明に抑制する抗RANKL抗体製剤などの注射薬を使用する場合もあります。